渡辺 京二【著】/小川 哲生【編】「維新の夢 渡辺京二コレクション 1 史論」

 ・まず、渡辺さんの本が文庫版になったことを嬉しく思う。
 ・「西郷の原点を、革命運動の挫折と、その後の遠島体験に観る渡辺氏の視点は、明治維新の指導者のうち、
  ただ一人、近代国家の建設ではなく、政治権力と最も遠いところで生を受け、人知れず死んでいく民の位相を
  自らの思想の原点としていたこの人物を、革命成立後、西欧近代の直輸入ではない新しい時代の価値観を
  作り出そうとしていった魅力的な像として描いている。」(P490、解説『近代と格闘した人々の声』)
 ・「死者の無念の意識とのみ共闘することを望み『馬鹿等敷忠義立ては取止め申し候』と、政治権力の論理を
  拒否した」(同)西郷に、著者の一貫した強靭な姿勢が重なって見える。