ノーマン・F・カンター【著】/久保儀明・楢崎靖人【訳】「黒死病 疫病の社会史」

黒死病―疫病の社会史

黒死病―疫病の社会史

十四世紀のヨーロッパを襲った黒死病がもたらした世界への、また後世への甚大な影響を、実にスリリングに描いた壮大な物語。黒死病の病原体を「宇宙塵」にもとめる現代科学の成果(?)を紹介しているのも楽しい。

小塩 節【著】「トーマス・マンとドイツに時代」

十九世紀後半から二十世紀半ばまで、ヨーロッパと世界の戦乱の震源地はいつもドイツだった。まさにそれはよかれ悪しかれ「ドイツの時代」だった。トーマス・マン(1875〜1955)はそのことについて次のように問いかけている。「世界にかくも良きもの美しきものを与えた」のに、しかもなお「再三再四かくも宿命的に世界の厄介者となったこの民族の性格と運命の中にひそむ謎」はいったい何だろうか、と(講演『ドイツとドイツ人』1945)。(『はじめ』により)

高橋 正男【著】「物語 イスラエルの歴史  アブラハムから中東戦争まで」

物語 イスラエルの歴史―アブラハムから中東戦争へ (中公新書)

物語 イスラエルの歴史―アブラハムから中東戦争へ (中公新書)

新書という小著にもかかわらず、四千年の歴史を密度の濃い筆致で描いている。読み応え十分な好著。

大江 一道【著】「世紀末の文化史 19世紀の暮れかた」

世紀末の文化史―19世紀の暮れかた

世紀末の文化史―19世紀の暮れかた

十九世紀の最後の十年代を、ときに呆然と佇み、ときに必死にもがいて脱出をはかった青年たちの生活史から綴る世紀末文化史論。登場する青年たちは、ラフカディオ・ハーン、ドイル、ロートレックムンクチェーホフデュルケームフロイト、ゾラ、南方熊楠夏目漱石など。

ジョン・ハリス【著】/越智 道雄【訳】「機関銃の社会史」

機関銃の社会史 (平凡社ライブラリー)

機関銃の社会史 (平凡社ライブラリー)

「ヨーロッパ列強の軍隊が、相互の戦争には機関銃が戦争の美学に反するとして使用を拒否されながら、有色人種を相手にするアフリカやアジアへの植民地戦争では率先して使用した」(P.306)。

平井 正・岩村 行雄・木村 靖二【著】「ワイマール文化 早熟な《大衆文化》のゆくえ」

ワイマール文化―早熟な「大衆文化」のゆくえ (有斐閣選書)

ワイマール文化―早熟な「大衆文化」のゆくえ (有斐閣選書)

ワイマール文化が再発見されたのは一九六〇年代であった。一九六〇年代、亡命者たちは郷愁をこめて世界文化の可能性を語り始め、二〇年代の偉大な遺産に目を開かれた。ワイマールの継承は、亡命文化人のみに限られない、それは底流としてナチ時代に流れ込んでいたのだ。