舘野 之男【著】「放射線と健康」

放射線と健康 (岩波新書)

放射線と健康 (岩波新書)

放射線防護の専門家が、低線量の放射線を問題にして障害といえば、昔は遺伝であった。しかし、いまはがんである。(中略)遺伝障害からがんへ。この変化は重大である。がんは被曝した人自身の健康問題であるが、遺伝障害といえば本人の健康問題というより、子、孫、子孫の問題であり、それ以上に社会的な意味合いを含んだ問題である。』(P.236)
経産省、厚生省、文科省などの官僚をみていると、どちらも軽視されているというしかない。放射線が及ぼす個人の健康被害や子孫への遺伝的影響に対する膨大な研究蓄積のなかには、確かにそれらの影響を軽視する研究も存在するのだろう。だからといって、安全を言い募って、本書に述べられているような甚大な被害者が存在することを無視しているような言説は許されるものではない。