吉岡 斉【著】「新版 原子力の社会史 その日本的展開」

新版  原子力の社会史 その日本的展開 (朝日選書)

新版 原子力の社会史 その日本的展開 (朝日選書)

帯にある「原爆研究から福島第一原発事故までの唯一の」に違わない本格的な通史で、実に読み応えがあった。政・官・産・学・自治体のせめぎあい/馴れ合いを冷静に批判的に捉えている。
「国際的視点からみた日本の原子力政策の特徴は、民間企業をも束縛する原子力計画が国策として策定されてきたことである。それに関与してきたのが、原子力委員会電源開発調整審議会、総合エネルギー調査会の三者であった。原子力開発利用のプロジェクトはみな、原子力委員会原子力開発長期利用計画や、電源開発調整審議会の電源開発基本計画など、ハイレベルな国家計画にもとづいて進められてきた。これを根拠として、科学技術庁通産省は強力な行政的指導をおこなってきた。このような仕組みは、国家総動員時代から敗戦後の統制経済時代にかけての名残であり、先進国では日本だけが、こうした『社会主義的』体制を現在もなお引きずっている。(中略)そして国民や地元住民に対しては、国策への『理解』(賛成をあらわす日本独自の行政用語)や『合意』(受諾をあらわす日本独自の行政用語)が一方的に要請されてきたのである。」(P.26〜P.27)