ホルヘ・ルイス・ボルヘス【著】/中村 健二【訳】「異端審問」

異端審問 (1982年)

異端審問 (1982年)

 ・読了。
  「初期のウェルズ」から一節を引用。

最上の探偵小説とは、最上のプロットを持つものの謂ではない。(中略)私見では、ウェルズ初期の小説の卓越性はもっと深いところに原因がある。これらの物語は単に巧みにつくられているだけではない。それは全ての人間の運命にともかくも内在する現象を象徴しているのである。瞼が光を遮ってくれないので、眼を大きく開けたも同然の状態で眠らなくてはならない透明人間の苦悩は、われわれの孤独であり恐怖である。