高山 宏【著】「世紀末異貌」

世紀末異貌

世紀末異貌

キャロルが活躍した時代はほぼ一八五〇年以降だが、一八五一年のロンドン万国博覧会が象徴しているように、<物>の圧倒的増加と情報危機を背景にそれらの管理システムがいろいろなところで発明され、強化されていった時代である。<方法>と<システム>を精緻化してきた<近代>そのものが、ここに凝縮されたとみることのできる半世紀である。(P.18)
ホームズ、フロイトマラルメ、ベルヌ、アガサ・クリスティー、吸血鬼ドラキュラ、切り裂きジャック、デパートを「発明」したプーシコー、広告王バーナム、クーベルタン男爵、そして疎外された群集・・・。百花繚乱の面々が楽しませてくれる。
21世紀がはじまったばかりなのに、終末感の真っ只中にいるような絶望感に襲われたりすると、さて100年前の世紀末にでも往って見るかとばかり、こういう本の世界に逃避(?)したくなる。当時も似非学者や御用学者が跋扈していたのであろうか、そんな無意味とも言える関心が無くはなかったが、むろん本書は原発事故以前の書物である。ただ、高山さんの本はやっぱり面白いことには変わりはない。